ドル円、米長期金利の動向が鍵

Featured

先週は世界的な株価が軟調な展開となるなか、投資家のリスク回避姿勢が強まり、円が主要通貨に対し上昇するとともに、ドルも対円以外で上昇した。特に先週金曜に発表された米4月雇用統計では、事前に発表された雇用関連指標や、最近の米経済指標が比較的弱い結果となっていたことから米景気回復の改善期待も後退し、市場でもネガティブな見方が優勢となっていた。ところが4月の米非農業部門雇用者数が前月比24.4万件の増加と、市場予想18.5万件を上回る強い結果になると市場では急激なドル買いが先行している。ただ、米雇用統計が市場予想を覆し強い結果となったにも拘らず、USD/JPYでのドル買いが続いていない。

その背景には、米長期金利の低下が挙げられる。USD/JPYでは米長期金利が低下するとドルは売られ、円が買われるのである。米雇用統計発表後も米長期金利が低下しだすとドル買いの勢いは低下した。お金の流れは金利動向に敏感なのである。市場では米国の景気回復期待や米連邦準備制度理事会(FRB)の出口戦略への方向転換が予想していたよりも遅々として進まず、遅れるリスクの可能性を意識していると思われる。その意味で現状のUSD/JPYは短期的に上昇する可能性よりも、下落する可能性の方が高いと考えられる。

ただ、ある一定の円高局面では、日銀による介入期待が円高進行に対してある種の抑制効果になっているようだ。為替相場が過度に無秩序な動きとなった場合にのみ介入が容認されるとの条件が付けられているものの、先進7カ国(G7)財務相・ 中央銀行総裁の合意がある。また株安は介入を正当化するための重要な要素となる可能性がある。さらに、日銀による追加緩和が円高への抑制策になると考えられる。一方で4月の米雇用統計が予想以上の好調さを示したことから米景気への懸念やFRBの出口戦略への期待後退の見方が改善する可能性もある。以上のことから極端な円高・ドル安も考えにくい。

量的緩和にとどまっている日銀と、景気回復の状況次第では出口政策や利上げ期待が先行しがちなFRBの金融政策の方向性や日米の金利差、外国人投資家の投機ポジション指標であるIMMの非商業の円のネットのショートポジションが、先物・オプション計で4月26日時点の3万8,540枚から5月3日には1万9,957枚に大幅減となり、円売りポジションを抱えていた短期筋の持高調整も一巡したと思われることから、中長期的にUSD/JPYは上昇しやすい環境が整いつつあると思われる。

いずれにしても今週のUSD/JPYに関して、米経済指標の他に、今週は米国債の入札、火曜に3年債(320億ドル)、水曜に10年債(240億ドル)、木曜に30年債(160億ドル)が予定されている。米長期金利に与える影響も十分に考えられることから注意して頂きたい。

為替相場を読み解くには市場の情報を素早く取得することが重要になる。FX会社は上記のようなリアルタイム情報がタダで手に入るサービスが豊富に用意されている。FX会社の比較をするときは比較サイトをチェックしよう。

FX相場を読み解く

今週は本邦がGWでアジア時間は閑散な取引が予想されたが、アジアの新興国(インド、ベトナム、フィリピン、マレーシア)が相次いで利上げに踏み切ったことや、国際商品相場(金、銀、原油など)が急落したことにより、世界的に株価が下落したことで、リスク資産通貨の豪ドルやNZドル、加ドルなどが全面安となる一方で、資金調達通貨である円やドルが買い戻される展開となった。

週初は国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が死亡したとの報道で一時的にドルが買い戻され、またバイトマン新独連銀総裁による「ECBは金融正常化すべき」との発言や、ユンケル・ユーログループ議長による「ユーロ高を懸念していない」との発言がユーロを支えていた。ただ米4月ADP雇用報告や米4月ISM非製造業など重要な経済指標が予想を大きく下回り、投資家のリスク回避姿勢が強まると、欧米株価や米長期金利が低下し、円買いとなる一方でドルが売られUSD/JPYは80円台に下落している。その後もアジア株の下落をきっかけに為替市場は全般的にリスク回避姿勢が強まり、円だけでなくドルも買い戻される展開となっている。USD/JPYでは、短期的な円ショートポジションの巻き戻しの影響もあり79円57銭(当社参考 Bid値)まで円高が進んでいる。今後もリスクの高まりは円買い戻しを発生させ、もう一段の円高が考えられる。また、震災の影響による企業などのリスク回避の円買いも予想されることから、USD/JPYやクロス円の下落に注意する必要がある。

またユーロでも、欧州中央銀行(ECB)政策会合後のトリシェ総裁の定例記者会見では、声明に「strong vigilance (強い警戒感)」という文言を入れなかった事を受け、6月の利上げ期待が大きく後退してユーロが売られた。EUR/USDでも1.4509ドル(当社参考 Bid値)まで急落している。欧州周辺国の財政懸念や株安などリスク回避姿勢が高まる度に短期的なユーロ売りが繰り返されるが、EUR/USDでは欧米間の金利差拡大見通しが、ユーロを支えると思われる。

最後に、本日(6日)は4月の米雇用統計の発表を控えている。市場予想では非農業部門雇用者数が前回21.6万人から18.4万人に減少すると見られ、失業率では前回と変わらず8.8%にとどまると見込まれている。ただ新規失業保険申請件数が増加傾向にあり、米4月ADP全米雇用報告の民間非農業部門雇用者数は前月比+17.9万人と、市場予想+19.8万人よりもやや弱い結果となった。雇用環境に対する見方が後退しており、非農業部門雇用者数が市場予想を下回れば株価下落、米長期金利は低下してUSD/JPYの一段の下落に繋がりかねない。結果次第では、再び80円割れとなる可能性が高いと考えられる。

注目のイベント&経済指標

≪米3月貿易収支≫
3月以降は、日本の震災に伴う供給制約が、自動車を中心に輸入を抑制する可能性が高い一方で、3月の石油輸入価格の急騰を踏まえると、3月の貿易赤字は拡大する可能性も高い。3月の米貿易収支は2月の458億ドルの赤字を上回り、470億ドルの赤字に拡大すると思われる。

≪豪4月雇用統計(雇用者数変化・失業率)≫
豪中銀は大洪水で被害を受けたクイーンズランド州での復興作業のペースが7-12月に速まるとして、今年の成長見通しを引き上げた。また、鉄鉱石や石炭の中国への輸出を背景に雇用需要が高まると見ている。ただ雇用者数は前回3月が3万7800人の急増した影響もあり、今回4月は1万7000人の増加にとどまると見ている。また失業率では前回同様4.9%の見込である。

≪米4月小売売上高≫
ガソリン価格が前月比+1.34%程度(季調済み)でガソリン・スタンド売上に寄与。自動車販売台数は前月比2.39%程度低下したものの、全体では前月から上昇する見込み。市場予想では+0.6%と、前回0.4%を上回ると見ている。

≪米4月消費者物価指数(CPI)≫
4月のガソリン価格は季節調整済みで前月比+1.34%程度だったため、CPI全体には前月からの押し上げ要因となり、前月比で上振れリスクの可能性がある。コアの部分でも先行指標となる生産者物価指数(PPI)が上昇傾向にあることから、CPIにも上昇圧力があるとみられる。
・4月CPI前月比:予想0.4%、前回0.5%
・4月CPI前年比:予想3.1%、前回2.7%
・4月CPIコア前月比:予想0.2%、前回0.1%
・4月CPIコア前年比:予想1.3%、前回1.2%

≪米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値≫
4月確報値は上方修正(速報値69.6から69.8へ)。NYダウ平均は上昇基調が続くも、5月に入り上げ幅を縮小。4月のガソリン価格は前月比+1.34%程度(季調済み)でマイナス要因となる。株価の一服感や原油高の影響が懸念されれば、前月から落ち込む可能性もあるだろう。ただ、4月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が改善を見せており、市場予想では70.0と僅かに上昇を見込む。